la vie est merveilleuse!

ふと思いついたことの徒然をゆっくりと

山の上ホテル

山の上ホテルが来年2月全館休業するという。


半世紀以上前のおぼつかない記憶を辿る。


御茶ノ水駅を出て
大学方面に向かい、茗渓堂書店を右に見て
大学の建物を過ぎてから、右へ曲がり
なだらかな上り坂の石畳のマロニエの並木道を進む。
やがて見えてくるどっしりとした西洋風の石の建物
山の上ホテル。
近くにアテネフランセ。
小さなヨーロッパ。


小林麻美さんに似ているサールクルのマドンナであった1年先輩の女性が
時々、そこのカフェでコーヒーを飲んでいる、と聞いた。
ああ、綺麗な大人の女性にはよく似合う、と思った。
ホテルにも彼女にも、憧れと小さな畏敬の念を抱いていた。


一度だけそのカフェでコーヒーを飲んだといううっすらとした記憶があるが
もうどんな景色だったかすら覚えていない。


その坂道の途中だったように記憶しているが
マロニエという喫茶店があった。
そこへはよく足を運んだ。
窓辺の席で一人、本を広げ、ふとマロニエの並木道に目をやり
ゆっくりと上っていく人を眺めていた。
曇り空の日。



御茶ノ水駅前で
サークル連合闘争委員会に属していた私も駆り出されてチラシを配る
ほぼノンポリだったので、申し訳程度の活動
中核の赤ヘル、ブントの黒ヘル
こちらは、洒落で、ピンクのヘルメット、笑


石畳を、友が剥がし投石する
神田カルチェラタン
街が騒然となる
錦花公園に集結し、互いの腕を結び隊列を組んで赤坂方面に向かう
シュプレヒコールが飛び交う
革命、の文字が躍る
が、
ゲバ棒なんて、武装した機動隊には意味をなさない。
貧乏学生の身体と、日々鍛えている機動隊員の身体との笑ってしまうほどの差。
圧倒的な権力を前に完膚なきまでに敗北を学ぶ


街はすぐに日常を取り戻す
全ては歴史の彼方へ


遠くにある学生時代
モラトリアムの時代



静かに佇む山の上ホテル
もう一度訪れてみよう
行けてなかったホテルのバーでカクテルを頼んでみよう
それくらいには大人になっていよう






ああ、お前は何をしてきたのだと・・・
吹きくる風が私に言う
            ____ 中原中也

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